1.エネルギーとは何か


物理的仕事とは何か

私たちはエネルギーという言葉を何気なく使っているが、エネルギーの正体は何かと問われると、意外と説明がむずかしい。

広辞苑によると、「物理学的仕事をなし得る諸量の総称」と書かれている。「諸量」というからには、一種類でなく何種類もあることがわかる。

たとえば、普段の生活のなかでエネルギーといえば、電気やガソリンによるエネルギーがあるが、電気の量とガソリンの量は同じ単位ではない。そう考えれば、さまざまな種類があることがわかる。

物理的仕事とは物を動かすことである。自動車を動かす場合を考えてみよう。自動車はガソリンで動くから、ガソリンには大量のエネルギーが含まれているに違いない。エンジンではガソリンと空気の混合ガスをシリンダー内で爆発させてピストンを動かし、車輪を回している。

しかし、自動車が走るために使われるエネルギーは、ガソリンが本来もっているエネルギーの16%にすぎない。残りのエネルギーは、エンジンを冷却したり、ブレーキやタイヤの摩擦で生じる熱エネルギーになって車外に放出される(図1-1)。

また、蒸気機関車は、石炭を燃やして水蒸気のエネルギーを利用したものである。スキーで滑るにしてもエネルギーが関係している。

<<図1-1>>自動車でのエネルギーの使われ方
<<図1-1>>自動車でのエネルギーの使われ方

このように考えれば、熱も物理的な仕事をしていることになる。したがって、熱はエネルギーの一つの形態である。最近では、電気自動車の開発が急がれているが、電気も自動車を動かすことができるからエネルギーの一つになる。

では、山の上からスキーで滑り降りることを考えよう。最初は止まっている状態だが、滑ることによって動くわけだから、なんらかのエネルギーを利用していることになる。高いところにあるものは、低いところのものより大きなエネルギーをもっているからである。水力発電は、水を高いところから勢いよく流すことで水車を回し発電する。高さのエネルギーをうまく利用した例である。

高さのエネルギーを利用するスキー
高さのエネルギーを利用するスキー

これらは、重力による位置エネルギーだが、物体がどのくらいのエネルギーをもっているかを、滑車を使って杭を打ち込む場合を考えてみよう(図1-2)。

  1. 人間が自分の力でロープを引っ張り仕事する。
  2. おもりが高い位置に上がることで、エネルギーをもつ。
  3. 手を離すと、おもりは落下して杭を打ち込むという仕事をする。

<<図1-2>>位置のエネルギーを利用した杭打ち
<<図1-2>>位置のエネルギーを利用した杭打ち

最近、地球の温暖化が進むなか、自然エネルギーの利用が注目を浴びている。自然エネルギーを利用する太陽光発電を例にとれば、太陽から届いた光を太陽電池で電気に変えるわけだから、光もエネルギーの一形態であることがわかる。

私たちが音を聞くということは、まず耳の鼓膜が振動し、その振動する信号が神経を通して脳に伝わることである。鼓膜を動かすということに着目すれば、音もエネルギーの一種ということになる。

エネルギーは化石エネルギーとそれ以外のエネルギーに大別できる。石炭、石油、天然ガスは化石エネルギーのなかの直接燃料である。また、原子力エネルギーや、水力や太陽を用いた自然エネルギーなどはその他のエネルギーになる(図1-3)。

<<図1-3>>エネルギーの種類
<<図1-3>>エネルギーの種類

エネルギーの保存と消費

ガソリンや石油が燃焼したときのように、物質の化学反応によるエネルギーを化学エネルギーと呼ぶ。熱のエネルギーは熱エネルギー、光は光エネルギーである。高いところにあるエネルギーは位置エネルギー、動いているものがもつのは運動エネルギーである。

もう一度スキーの滑走を考えてみよう。石油を使って発電した電気でリフトを動かし、それに乗って山の上まであがり、滑り降りる。つまり、化学エネルギーを電気エネルギーに変え、電気をリフトという運動エネルギーに変え、さらにリフトに乗ることで、位置エネルギーを獲得し、それをふたたび運動エネルギーに変えていることになる。そして、この位置エネルギーと運動エネルギーの和を力学的エネルギーと呼んでいる。

エネルギーは保存されるというエネルギー保存の法則がある。ある種エネルギーが減少していくと、その分のエネルギーが消えてなくなるわけではなく、かならず他のエネルギーに変わっている。私たちは、エネルギーの形をさまざまに変化させることで生活していると考えることができる(図1-4)。

<<図1-4>>エネルギーの変換
<<図1-4>>エネルギーの変換

エネルギー保存の法則は、エネルギーがさまざまな形に変化してもその総和は一定に保たれていることを示している。

エネルギー保存の法則が正しいとすれば、スキーヤーが滑り終わっ て止まったときに、それまで使ってきたエネルギーはどこへいったのかという疑問がわいてくる。それは空気の抵抗を押しのける力になったり、実感することは できないが、主に雪とスキー板の摩擦によって熱に変化しているのである。このときの摩擦熱によりスキーとの接面の雪が溶けて水になり、それが滑剤となって スキーはすべるのである。

とくに、ブレーキをかけると大きな発熱がある。車でも自転車でも、ブレーキをかけながら長い下り坂を下るとタイヤが熱くなって磨り減ってしまう。このことは、運動エネルギーが熱エネルギーに変化することを物語っている。しかし、発熱量は小さいので、雪や道路を溶かしたり周辺の大気の温度を変えるほどにはならない。

私たちは、工場や家庭でも大量のエネルギーを消費する。エネルギーを消費することで最終的には熱エネルギーになり、大気の温度をほんのわずかだけ上げることになるが、エネルギーを消費しても、エネルギー保存の法則からは外れることがないのである。